甲状腺の病気について
中高年女性に多く見られる病気です。個人でキチンと診断されていない場合も多く、自律神経失調症・更年期障害・産後うつ病等と間違えられている場合もあり、病気に気づいていない人も多いと言われています。甲状腺の病気のセルフチェックで症状を確認してみましょう。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病かな?無痛性甲状腺症かな?と思ったら)
- 暑がりである(夏に弱い)
- 汗かきである
- 疲れやすい
- 動悸がする
- 息切れする
- 落ち着きが無くイライラする事が多い
- 食欲はあるのに体重が減った
- 手足が震える
- のどぼとけの下が腫れている
- 目つきがきつくなったり眼球がでてきた
甲状腺機能低下症(橋本病かな?と思ったら)
- なにをするにも億劫である(無気力である)
- 皮膚が乾燥してカサカサする
- 寒がりになった
- むくみがある
- 髪や眉がうすくなった
- 声がかすれたり低い声で話すようになった
- 便秘がちである
- 物忘れが多くなった
- 食欲がない
- 体重が増加した
甲状腺の検査とフローチャート
中高年女性に多く見られる病気です。個人でキチンと診断されていない場合も多く、自律神経失調症・更年期障害・産後うつ病等と間違えられている場合もあり、病気に気づいていない人も多いと言われています。甲状腺の病気のセルフチェックで症状を確認してみましょう。
血液中の甲状腺ホルモン量測定
甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症が有る無し、甲状腺機能が正常か判断します。甲状腺ホルモン量測定は、FT4(フリーサイロキシン)、FT3(フリートリヨードサイロニン)等の血中濃度を測定。
甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモン濃度が、それぞれ高値になっています。甲状機能低下症では、甲状腺ホルモン濃度が、それぞれ低値になっています。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)と甲状腺ホルモンは相互作用し合い、ホルモン分泌の調節しています。
TSHは甲状腺ホルモンが少なくなり過ぎると多くなり、甲状腺ホルモンが多くなり過ぎると反対に少なくなります。
バセドウ病や橋本病は自己免疫疾患です。血液中に抗甲状腺抗体が検出されます。
抗甲状腺抗体は血液検査で診断の参考にします。
(1)TRAb(抗TSH受容抗体)
(2)TgAb(抗サイログロブリン抗体)
(3)TPOAb(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)
甲状腺癌診断の為に行うもの。
エコー(甲状腺超音波)・シンチブラフィー・CT・MRI等で行います。
甲状腺癌診断の為に行うもの。
細胞診(注射針で少量の甲状腺細胞を吸引し検査診断)
正常値 | 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺機能低下症 | |
---|---|---|---|
TSH(甲状腺刺激ホルモン) | 0.3〜4.0μU/ml |
↓ |
↑ |
FT3 (フリートヨードサイロニン) |
2.5〜4.3pg/ml |
↑ |
↓ |
FT4(フリーサイロキシン) | 1.0〜1.8ng/dl |
↑ |
↓ |
TRAb(抗TSH受容体) | 10%以下 | バセドウ病で陽性 | 原発性甲状腺機能低下症で陽性 |
TgAb (抗サイログロブリン抗体) |
0.3U/ml未満 | バセドウ病で陽性 | 橋本病で陽性 |
TPOAb (抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体) |
0.3U/ml未満 | バセドウ病で陽性 | 橋本病で陽性 |
妊婦と甲状腺
バセドウ病の人が特に妊娠しにくい心配はありませんが、不妊の疑いがあれば相談下さい。
バセドウ病の患者でも妊娠・出産は可能です。事前に治療で甲状腺機能を十分コントロールしておく必要性あります。妊娠中甲状腺のコントロールが十分でなく甲状腺機能亢進症が続くと、流産・早産し易く、体重が少ない赤ちゃんが生まれる可能性があります。
バセドウ病患者は、妊娠中甲状腺機能がよくなることがあり、その際は服用薬の減量が可能。産後1年位までの間に、再度甲状腺機能が悪くなる事があり、出産後バセドウ病再発悪化や無痛性甲状腺炎が発症します。無痛性甲状腺炎は痛みが無く甲状腺機能亢進症は一時的で、治療不要ですが注意して下さい。
抗甲状腺剤はメルカゾールとチウラジール、又はプロパジールです。チウラジール/プロパジールはメルカゾールより胎盤通過性が少なく、メルカゾールは妊娠中服用で新生児のさい帯ヘルニアや頭皮欠損が現れる場合があります。副作用でメルカゾールしか服用できない人もいるのでご相談下さい。
授乳の際、母体服用がメルカゾールよりもチウラジール/プロパジールの方が影響が少ないです。メルカゾールも服用後数時間経過では、ごくわずかしか母乳にでてきません。服用薬の種類や服用量によっては授乳可能です。
バセドウ病母体から新生児にもバセドウ病が起こる場合があります。しかし、全ての新生児がバセドウ病になるわけではありません。バセドウ病の母親の甲状腺を刺激抗体(TRAb・TSAb)が多い場合には起り易いです。新生児のバセドウ病は、母親の血中TRAb・TSAbが胎盤通過し新生児へ移行する為起りますが、この抗体は生後、次第に新生児の血中から消失していき、よくなりますので心配いりません
橋本病患者でも甲状腺機能が正常であれば妊娠しにくいわけではありません。甲状腺機能が低下の場合は、妊娠しにくい事があります。検査の上、甲状腺機能を正常にする治療の必要性があります。
橋本病で甲状腺機能正常でも、妊娠出産により甲状腺機能の変化生じやすく、妊娠中・出産後は検査を受けましょう。甲状腺機能低下では、甲状腺ホルモン剤により治療を行いいますが、甲状腺ホルモンは胎盤通過せず、胎児に影響ありません。母体に不足している甲状腺ホルモンを補うだけで、授乳も普通に行えます。
橋本病で妊娠中・出産後甲状腺機能の変化が起こり易く、妊娠中定期検査必要。特に、出産後6カ月頃までは、甲状腺機能の低下や無痛性甲状腺炎により一時的に甲状腺機能亢進が見られる場合もありますので、必ず定期検査を受けましょう。